ロブ・ホヴサピアンとのQ&A： 危機を未然に解決するエンジニア

ロブ・ホヴサピアンとのQ&A： 危機を未然に解決するエンジニア

ロブ・ホヴサピアンとのQ&A： 危機を未然に解決するエンジニアとしてNRELが伝えています。写真もNRELより

約10年前、ロブ・ホヴサピアンはヨットを買った。彼はそれをV’gerと名付けた。

トレッキーでない人のために説明しておくと、V’gerは映画『スタートレック』第1作に登場する、20世紀の地球人が宇宙に送り込んだ探査機である。この探査機の任務は、できるだけ多くの知識を集めることだった。そしてそれは実現した。2世紀分のデータを収集した後、探査機は知覚を持つ存在となり、その名をヴォイジャー6号からヴジェールへと変えた。

国立再生可能エネルギー研究所（NREL）の機械エンジニアであるホヴサピアンは、母校であるフロリダ州立大学のヨットクラブに自分のヨットを寄付した。しかし彼は、少なくとも精神的にはヴゲルを完全に失うことはないだろう。

スター・トレック級の地球滅亡の危機とまではいかないかもしれないが、それに近いものだ。例えば、信頼性の高いクリーンエネルギー網を構築するにはどうすればいいのか？あるいは自然災害からの避難を容易にする？量子ハッカーから銀行を守るには？

「ホヴサピアンは、「国立研究所として、私たちは全体像を見る必要があります。

スタートレックのクルーのように、ホフサピアンは探検家であるが、彼の最後のフロンティアは未来である。彼の宇宙船（V’ger light）は、Advanced Research on Integrated Energy Systems、略してARIESと呼ばれるものだ。この洗練された唯一無二の研究プラットフォームは、発電所、バッテリー、スマートフォン、電気自動車、スマートビルなど、我々の未来のテクノロジーが緊急時にどのように通信するか（あるいは通信できないか）をエミュレートすることができる。

現在、ホヴサピアンは宇宙船に新たな機能を追加している。彼はNRELを国立研究所や学術機関を含む他の研究所と結びつけ、スーパーラボを構築し、国家規模の大規模な危機に国がどのように対応できるかを研究している。また、ARIESプラットフォームに量子コンピュータを追加し、パターンを素早く特定し、緊急対応を改善しようとしている。

「これらの課題を特定し、解決策を開発し始めるのは我々の義務だ。「問題が起きてから解決策を考えるのでは遅いのです」。

NRELの最新のManufacturing Masterminds Q&Aでは、ホヴサピアンが戦闘機や陸軍無線の製造をやめた理由、子供たちが今彼が何を作っていると思うか、そしてスーパーラボが解決に役立つかもしれない珍しい国家的な出来事について話している。

どうしてエンジニアになったのですか？

ずっとエンジニアになりたかったんだ。小学校から大学まで、間違いなかった。

すごい。どうしてそう思ったんですか？

ただわかっていたんだ。モノを分解していたからね。いつもおもちゃを分解していたのは、それがどうやって動くのか知りたかったからでしょ？テレビもビデオデッキも分解した。

ご両親はさぞかし喜んだでしょうね。では、なぜ機械工学を選んだのですか？

航空宇宙エンジニアとしてキャリアをスタートさせたんだけど、結局、自分が何をしたいのかよくわからなかったから、機械工学に進んだんだ。機械工学はより多様性があり、制御は常に私の情熱の対象だった。

制御」とはどういう意味ですか？

ロボット工学における制御とは、例えばロボットアームを特定の場所まで駆動させ、その位置と速度をリアルタイムで制御して製品を製造する方法を指します。

おお、かっこいい！学部はアラバマ大学に行かれたんですよね。その後はどうされたのですか？

学部時代に勉強した流体力学の本をたくさん書いていたクリシュナ・カラムチェティ教授の本を読みました。彼がフロリダ州立大学の教員であることを知り、連絡を取ったところ、私を招待してくれた。結局、大学院に入学できただけでなく、職も与えてくれた。しかし、彼は私に博士号を取得し、他の学生をサポートすることを約束させた。それ以来、私はいつも2、3人の博士課程の学生を指導している。その約束を守っているんだ。

なかなかいい取引だったようですね。彼はどんな仕事を紹介してくれたのですか？

最初の仕事は、航空宇宙・防衛企業のゼネラル・ダイナミクス社でした。1989年のことだった。ロボット工学と製造ラインを駆使して、次世代陸軍無線機の製造に携わったんだ。その後、アメリカ空軍のF-22ステルス戦闘機プログラムに就職しました。私はF-22戦闘機の生産を自動化し、よりコスト効果の高い自動車製造ラインを使用した。その後、博士号を取得する傍ら、米国海軍省の海軍研究局でプログラム・マネージャー兼役員として働き、全電動船の開発に焦点を当てた研究プログラムを管理しました。

へえ！

そうなんです。子供たちに “今、何を作っているの？”と聞かれたので、パワーポイントのプレゼン資料を作っていると答えたよ。F-22から陸軍無線機、全電動船、そしてパワーポイントまで。それは違うよ。つまり、私はパワーポイントプレゼンテーションをたくさんしているが、ARIESの研究プラットフォームを構築するための戦略的プランニングの一部でもあったのだ。

ARIESの話に入る前に、米海軍からNRELに移られた経緯を教えてください。

当時、私はフロリダ州立大学の教員でもありました。国防の仕事を辞め、初めてアカデミアの仕事に就いたとき、給料が30％下がりました。ほとんどの人は、そんなことをするなんてどうかしていると私に言った。でも私は、400機のF-22や1万台の陸軍無線を作っただけでキャリアを終えたくはない。何か遺産を残して、地域社会に変化をもたらしたいんだ。

私は米エネルギー省の水力発電技術局を2年間サポートし、その後アイダホ国立研究所に5年間行った。NRELがARIESを建設すると聞いたとき、それが私の情熱だったので、すべてを投げ出して今に至ります。

完璧な移行です。では、ARIESについてお話ししましょう。ARIESとは何ですか？

ARIESはソフトウェアとハードウェアを統合し、再生可能エネルギー機器、バッテリー、電気自動車、水素、ビルディングなどのクリーンエネルギー技術が、将来のカーボンフリーのグリッドでどのように連携するかを理解するのに役立ちます。こんなことは誰もやったことがない。何百ものデバイスをペアリングした例はない。そしてここでは、数千台規模のデバイスについて話している。

数千台です！ARIESで解決しようとしている問題は何ですか？

私たちは、従来の古典的なコンピューティングやモデリングでは解決できない次世代の問題を理解しようとしています。

例えば、緊急時に電気自動車に十分な電力が供給されるのか？今日、私たちはガソリンスタンドの場所を知っています。私は今、フロリダのタラハシーにいる。ハリケーンが来て避難勧告が出れば、人々はどうやって避難するか知っている。もし私たち全員が電気自動車を使うとしたら、それはどうやって機能するのでしょうか？

では、稀な出来事が起きたとき、私たちはどうやってそれを軽減するのか？そのためには、携帯電話、電気自動車、衛星、緊急対応システム、ビル管理システムなど、テクノロジー間の統合をもう少し進める必要がある。

さらに大きな、国家規模の課題に対処するために、何千もの異なる機器間の通信をエミュレートする必要があるかもしれないスーパーラボを建設しているとも聞きました。

私たちが国家として直面している課題は、1つや2つのラボが取り組むよりもずっとずっと大きなものになるでしょう。スーパーラボは、学術研究所と国立研究所を結びつけ、人材だけでなくリソースも統合して、このような大きな問題に答える。私たちはすでに、パシフィック・ノースウェスト国立研究所とアイダホ国立研究所の2つの研究所をつなぐことを実証している。私たちの目標は、7つの研究所と10,000台の機器を接続し、大規模な国家的イベントに対処することです。それをスーパーラボ2.0と呼んでいます。

どの国家的イベントに取り組むかは決めているのですか？

ハリケーン・カトリーナやマウイ島の山火事、2021年のテキサス凍結のような、重大で稀な出来事でなければなりません。

私たちの目的は、実際のハードウェアや、オートメーション制御、エネルギー貯蔵システム、バッテリー、風力タービンなどのさまざまなグリッド資産を使って、現実世界のイベントと環境を作り出すことです。

面白いですね。しかし、これは『Manufacturing Masterminds』シリーズであり、これらすべてが製造業とどのように関係しているのでしょうか？

これらの技術はすべて、私たちが現在製造している次世代デバイスです。気象観測所やブロードキャスト通信と会話できる携帯電話をどう作るかを考える必要がある。5Gは良い例だ。米国以外の国々は、我々よりも優れた5G技術を開発している。それは、私たちの高度な製造業が、今日私たちが必要としているものと同等でないことの表れです。

ガッチャ。米国の製造業が競合他社を凌駕する方法は他にもありますか？

誰もが量子コンピューティングについて話している。今、我々はARIESで行っているリアルタイム・シミュレーション（quantum in the loopと呼ばれる）に量子コンピューティングを結びつけている。これにより、研究者が次世代の電力・エネルギーシステムの課題を解決するために、量子コンピューティングをより簡単かつ迅速に導入できるようになることを期待しています。

では、量子コンピューターによって、より高速なシミュレーションが可能になるのでしょうか？

パターンをより速く特定できるようになるでしょう。

例えば、ハリケーンの際の電気自動車の充電状態を調べるとしよう。量子コンピューティングを使えば、潜在的なボトルネックをすぐに見つけることができる。そうすれば、より効果的な避難勧告を出すことができる。人々を別のルートに誘導し、1、2時間待つように指示したり、行く前に家でX回充電するように指示したりすることができますから、ハリケーンが来る途中で立ち往生する人を出さないようにすることができます。

あなたの後を継いで、このような将来の危機を解決する手助けをしたいと思っている人たちに、どのようなアドバイスをしますか？

絶対に私の跡を継いではいけない。ただ全体像を見て、何か違うことができないか考えることだ。間違っても構わないし、失敗から学んで、次はもっといいことをすればいい。